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抜いた歯は生えてきません.削った歯は元に戻せません。歯科治療は両刃の剣であることを理解して治療を受けてくださるようおねがいします.

TEL.03-3954-8844

〒161-0032 東京都新宿区中落合2-20-6

プロフェッション


中世のボローニャにおける医学の講義
 歯科医療というのは、それを利用する側からすれば、何をされるのか、どういう結果になるのか見当がつかないというところがあります.さらに、その治療がまずければ、歯を失ってしまう運命が待っています.

 かぶせたり、詰めたりの補綴処置はその歯科医の行った症例写真を見せてもらえば、その仕事ぶりや出来上がりはある程度想像できるかもしれません.
 しかし、歯周病治療はそうはいきません.その歯周病処置が正しいのかどうか、その歯科医の抜歯という判断が適切なのかどうか、患者さんにはよくわかりません.

 歯科医師は国家試験を受けてその資格を取得していますが、その試験は筆記試験で、マークシートの試験に合格したからといっても、必ずしもその臨床が優れているかどうかは分かりません..
 
 歯科医療の中身は患者さんにはわからないにしても、同業者であれば、かなり判断がつきます.
 かつて、医療では同業者が団体をつくり、団体の名において医療者の資格の認定を行い、その治療の中身を自律的に保障していました.そして、それを教会なり国王の権威により裏書きしてもらうことで公に認めてもらったのがプロフェッションのはじまりです.
 かつてプロフェッションとよばれる職業は医師と法律家と聖職者の三つだけでした.いずれも人の生と死に深くかかわっており、他人に対して知識の上で助力を与えることを職業上の特徴としており、質の悪いサービスを受けると重大な結果をまねくおそれのあるものです.
 歯科医師も医師のはしくれと考えるのであれば、プロフェッションとしての自覚を持たなくてはなりません.

聖マタイの召命 ミケランジェロ・カラヴァッジョ
 プロフェッションについて、片山セミナーのノートに以下のような記載があります.
 『キミたちは自分の仕事をプロフェッションとしてきちっと意識しているだろうか.
 自分が現在プロフェッションとして、どの程度の医療者であるか考えたことがあるだろうか.
 現在の自分の力はどのくらいであるかを知り、自身の可能性をみつけ、自分の力の限界を調べていかなくてはならない.
 プロフェッションとして同業者が保障してくれる力量がありますか?それを確かめる時間を持っているだろうか?
 1日8時間、診療室でウロチョロしてこと足れりというのでは、機械に使われる社会的奴隷にしかすぎない.われわれは命をかけて人間を助けていくプロフェッション.診療4時間、調査を4時間、技工を4時間とることが必要.1日12時間を人のために奉げるのがあたりまえ.ミーイズム、マイホーム主義(両方とも平成の現在ではあまり耳にしなくなった言葉ですが)では本当の医療はまっとうできない.
 4時間の調査時間というのは、教養の意味での読書をすること、自分と向き合い反省し記録すること、医学医療についての勉強する時間のことを指す』

 補綴処置は口の中に結果が残り、実際に使うのでその良し悪しは患者さんにも多少分かりますが、歯内療法(神経の治療)や歯周病治療はそれが適切な処置なのかそうでないのかの判断は患者さんには難しいでしょう.
 
 プロフェッションというのは自律的に職業行為を規制する、すなわち倫理観を持って仕事にあたるということになります.すなわち歯科医療とは倫理的な職業で、もし歯科医師に倫理感が欠如していれば、恐ろしいことになってしまいます.
 そしてその恐ろしい事態が日常的に起こっているのが現代日本の歯科事情です.
  
 歯科医療はプロフェッションの仕事であることを肝に銘じ、プロフェッションの気概をもって診療にあたりたいと思います.


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